届かない季節(漂流の章)(5)
「さっきからそこに居るのは誰だ? 
地底の王の息子を語った男。そうであろう?」
主人と行動を共にするコウモリの群れを従え、
古めかしい杖と懐中時計を手にした大男は、
楓の前に優美に降り立ち、そう言った。

「気配を消してもわかるとは恐れ入った!
ははは……ほほー、それが本当の姿なのか。
あのオドオドとした侍従の態度は、
まさに助演男優賞ものだったな」
ははは……と楓はからかって大笑いした。

「それは……お褒め頂き恐縮でございます。
やはり……王族の血を引くお方ですな。
どんなにしていても気品が漂っておられる。
実に……羨ましいことでございますな」
皮肉を込めて、こう言葉を返した。

「そんなことはどうでも良い。
まずは本当の名前を聞こう! 
まさか……コウモリという名前ではあるまい? 
あははは……それは、それで面白いが……」
くくく……楓は挑発し続けた。

「地底の王、いや、あの男には、
それで通じましょうが……
私には無理でございますよ、楓様。
その様な挑発では……堂々巡りになりますぞ。
私の名前はドラクロア伯爵。
吸血鬼の末裔にございます」

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/14 19:10 】 | 届かない季節No.2(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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