届かない季節(漂流の章)(4)
森の民と別れを告げ、
漆黒の闇の中に飛び立った楓は、
その闇の中にぼんやりと浮き上がる、
明かりを見つけると、そこに降り立ってみることにした。

自分の気配を消しながら、
その明かりのさす方へと静かに近づくと、
朽ちてはいるが、割と大きな屋敷が、
生い茂る木々の中に、どっしりと建っていた。

その屋敷の中の様子を遠巻きに見ていると、
もうこの世に居ない、偽の、地底の王の、
侍従だと名乗る人物がそこに居た。

「やっぱり思った通りだ。
奴があの科学者を利用していたのだな。
それにしても……
あの暗赤色の瞳は何処かで見たことがある。
んー……何処であったか……思い出せぬ!」

今度はもっと近づいて、
壁の隙間からそっと覗いていると、
一人暖炉の前に佇んでいた、その人物は、
煙の中で本来の姿に変わっていたのである。

そこに居たのは、
上半身コウモリ姿の大男であった。
何百匹という吸血コウモリが壁に貼りついて、
こちらの様子をじっと監視している様に、
楓の目には映っていた。

しかし、
何かを察知したのか、
楓の立つ上空目掛けて、
そのコウモリ達がバサバサと、
いっせいに外へ飛び出してきた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/13 16:40 】 | 届かない季節No.2(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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