届かない季節(漂流の章)(3)
茜姫が親の決めた婚姻を嫌がって、
月を飛び出してきた話を紫苑や藍花としていた時、
司はだいぶ離れた場所に移動していた。

茜姫は司には聞かれていないと思っていたのだが、
飛行民族は元来遠くの音まで聞こえるので、
紫苑たちの会話は司には筒抜けであった。

しかし、
何も知らないといった素振りで、
司はただ茜姫の泣き止むのを、
じっと待つことにした。
トクントクンと二人の鼓動が重なって、
司の顔がみるみる赤くなっていった。

椋は『ははーん!』と言って薄笑いをすると、
「じゃ、後は、司、よ・ろ・し・く!」
そう言って、その見事な翼を羽ばたかせ、
そのまま飛んでいってしまった。

「恋か……どんなものなのか? 
僕にも心沸き立つような……
そんな恋が訪れるのだろうか?」
風を頬に感じながら、数度旋回して、
椋は海に浮かぶ小島に降り立った。

「ほお、本当に地球と同じなんだなあ。
それにこの海の青さといったら……
何もかも澄み切っているなあ」

のんびりと海を眺めていると、
沖の方が泡立ち始めたかと思うと、
ドドド……ドドド……
その轟きと共に大きな波がこちらに向かってやってきた。
その時,波間に何かが跳ねるのを、しっかりと椋は見ていた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/12 17:48 】 | 届かない季節No.2(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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