届かない季節(翼の章)(39)
そこに残っていたのは、
皆森の民であるばかりか、
王族に縁のある者達ばかりであった。
かつての侍従、側近、食事係…
皆、自分達の復帰を抱き合って喜んでいた。

楓がゆっくりと近づいて、
葵の手をぎゅっと握りしめた。
「本当に良かったな。
これからは親子仲良く暮らすのだぞ。」

そして王と王妃に別れを告げると、
元地球人……いや……
あの男が居る牢獄に向かって、
ザクザクと音をたてて足早にその場を後にした。

楓にはもはや何の迷いもなく、
その瞳には冷やかに燃えあがる、
炎がメラメラと映っていた。

かなりの時間を叫び続けたのか、
その男はぐったりと頭をうな垂れて座り込んでいた。

しかし、
人の近づく気配を感じると、
むっくりと起き上がり、
獣の様な目つきになって、
その相手を今か今かと待ち構えていた。

ギイイー……ガシャーン!
カツーン……カツーン……
「元地球人殿、ご機嫌はどうかね?
おっ……まだ気力が残っている様だな。
なかなかシブトイのお。くくく……」
その男を前にして楓は挑発していた。

「何をー……貴様、何奴じゃ?
申してみよ! さっ……言うのじゃ!
これは王の命令だぞ。絶対服従だ!」
肩でゼイゼイ息をしながらも、
王としての振る舞いをまだ保っていた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/10 14:37 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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