届かない季節(翼の章)(38)
王に急かされて……
葵はそれを首から外し、
カタバミの葉の中央部を開けてみると、
中には小さく畳まれた紙が入っていた。

「これを身につけし者は、
森の民の王女である!」
森の民の言葉でそれは綴られ、
最後に王族の花押が記してあった。

「アタクシは王女なのですね。
天涯孤独だと思っていたのに、
お父様、お母様がいらしたなんて……」
その後は言葉にならなかった。

王妃はたまらず走り寄って
王女をぎゅっと抱きしめ、
それを見ていた王も、
流れ落ちる涙を拭いもしなかった。
皆、王女との再会を見守りながらも、
この奇跡が未だ信じられない様子であった。

「本当にむごいことをするものだ!」
楓は王に成り済ましていた、
あの男の事を一人で考えていた。

ちょうどその頃……
森の茂みに隠れて、
不思議な光を放つ暗赤色の目が、
じっとこちらの様子を伺っていた。

しかし、
この時それに気がつく者が、
誰一人居ないことを知ると、
その瞳の主はにやりと不敵な笑みを浮かべ、
何処かに消えてしまった。

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【2008/05/10 02:13 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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