届かない季節(翼の章)(35)
楓は何食わぬ顔で、祝宴の場所に戻っていた。
無礼講であった為に、かなりの者が泥酔して、
床に寝そべって、高いびきする者までいた。
「平和なものだな。さっ……ここからが本番だ!」
自らの心に言い聞かせて、皆の前に立った。

楓の眼つきは次第に鋭くなり、
ギラギラとしたその様は、
一瞬まるで狼そのものに見えた。

楓がその場で呪文を唱えると、
瞬時に空間移動が行われ……
景色は森の中へと変わった。
「んー……」
次々と皆目を覚まし始めていた。

そして……
さらに楓は麻袋の中から、
持ってきた薬草の『思い出草』を取り出し、
それに火をつけ始めた。

すると……
あたりはすぐにその煙に包まれ、
ほとんどの者が記憶を取り戻し、
自分たちが地球人であることを
思い出したのである。

お互いに己の姿を確認しては、
涙を流しながら、喜び、抱き合った。
それを見ていた楓が、
強い口調でこう言った。

「二度と過去の過ちを犯すでないぞ!
もう一度だけ機会を与えてやろう。
さあ美しい新たな地球として、
この地を開拓するがよい。ただし……
それなりの代償は払って貰うからな!
地球人どもよ! さあ、行くがよい!」

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/08 19:51 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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