届かない季節(翼の章)(3)
「司のヤツ、今度は、何処に行ったんだろう?」
そう呟いた後、紫から墨色に変わりつつある空に、
狼煙がゆらゆらと立ち昇るのが見えた。

「人間どもめ、また翼狩りをしようとしているのか?
危ない! 司が危ない!」
首からぶら下げていた翡翠のハト笛を、
椋は思いっきり吹いた。
それは飛行民族にしか聞こえない音のする笛で、
こんな風に危険を察知した時、
仲間に知らせるために使用するものであった。

その音は夜風に乗って谷を駆け抜け、
確かに司の耳にもハッキリと聞こえていた。
少女をそっと抱き寄せて、目を閉じ、
3……2……1……と空に向かって叫んだ。

ジジジ……ドゥギューン!
パラサイト火縄銃の引き金を引いたのと同時に、
司と少女は、そこにはもう居なかった!

「何処に行ったんだ? これだけの包囲網だ。
そう遠くには逃げられんぞ。
探せ、探せ。もっと明かりを集めろ!」
その部隊を束ねる警備隊長は檄を飛ばした。

上昇気流に乗って、螺旋の雲の中を通り、
すごい速さで湖のほとりに二人は着地した。
さっきまでの緊迫感が嘘の様に、
虫たちの奏でる音色だけが夜を彩っていた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/04/26 01:36 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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