届かない季節(翼の章)(34)
「ここに居たのか……」
元々お酒には強かった司が起きてきた。
その声に、さっきまでの空気が跡形も無く消えて、
茜姫は現実に引き戻された。

17歳の司は、飛行民族ではもう立派な成人であった。
15歳で元服をむかえ、
そこからは大人扱いになり、
果実酒も堂々と飲めるのである。

「月族ってすごい力を持っているんだな。
あれほどの人数を一瞬のうちに、
ここまで連れて来ることが出来るんだからな。
本当に驚くことが多いぜ!」
そう言って視線を茜姫に移した。

「みなさま、相当酔っていらしたからですわ。
それに……アタクシ達の素行を……
これ以上お見せしない為にも、
そうさせて頂いたのですよ。おわかりになって?」
王女らしい茜姫の毅然とした声は、
司を暫く黙らせた。

「姫様、これからどう居たしましょう?
ここは飛行民族の方々が、じきに開拓されましょう。
王様、王妃様が月にてお待ちでございます。
さあ、姫様、私どもと月に戻りましょう!」
しっかり者の紫苑が茜姫に問いかけてきた。

「アタクシが、何故、月を飛び出したか……
忘れたんですの? 紫苑! 藍花!
父上の決めた方との婚姻など絶対にイヤですわ。
アタクシ、まだ14になったばかりですのよ。
もう将来を決められるなんて……」
茜姫はわっと泣き出してしまった。

「14で結婚だって?
だから……月を逃げ出してきて……
そして……あのススキの原で出会ったのか……
泣いていたのは……そういうわけだったのか……」

今までを振り返りながら、
自分にも何故なのか解らない程に、
司の心は少し揺れていた。

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【2008/05/07 21:02 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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