届かない季節(翼の章)(33)
楓は親のぬくもりを知らずに、
王族として、茜姫と一緒に育った。
自分の生い立ちについては、
何となくウワサとして耳に入っていた。

王族の茜姫の伯父である父親。
魔界族の王女である母親。
月の厳しい掟を破り、
道ならぬ恋を貫いた二人は、
まだ楓が赤子の時に、
既に宇宙の何処かに流罪になっていた。

月では、王族は魔界族とは、
共存共栄の関係にあったが、
お互いの種の純血を守る為に、
「異族の婚姻はご法度!」
なる厳しい掟があった。

しかし、
年に一回盛大に行われる王族主催の仮面舞踏会で、
二人は、出会ってしまったのだ!
そんな掟も関係ない程に、
お互い運命の赤い糸を手繰り寄せ、
若い情熱のまま契りを結んだ。

楓の父親は次期国王になる身であった。
しかし『そんな身分など関係ない!』と、
愛する女性と喜んで、その罰を受けた。
王族、魔界族を追放された二人は、
この宇宙の何処かで生きている。

「父上は……母上は……今……
何処で、どうしていらっしゃるのだろう?」
そんな楓の切ない表情に茜姫が心配になって、思わず口を開いた。
「兄さま、どうしたの?」

「何でもないよ。
さ! 早く帰らねば、皆が心配するよ」
その声が、幾重にも心に反響して……
茜姫は、急に、楓に逢いたくなっていた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/07 20:56 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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