届かない季節(翼の章)(24)
「のう、楓、姫が婚姻を嫌がって、
月を出て行ってしまってのー……
今、紫苑と藍花に探させておるが、
まだまだ二人とて若い。少し心もとない気もする。
そこでじゃ…そちが後を追って、
三人を連れ帰ってはくれぬか?」
月族の王は夜風に当たりながら、
一人の父親の顔になって、そう言った。

「また茜も思い切ったことをしますね。
昔からだけれど……それにしても……
月を飛び出すとは……正直、驚きましたよ」
苦笑しながら、昔の茜姫を思い出していた。

楓と茜姫は幼馴染であった。
といっても三つも離れていたので、
どちらかというと兄妹の様にして育った。
茜姫はいつも楓の後を『にいさまー』と、
慕ってついて来る様な少女だった。

「王様、わかりました。この楓にお任せ下され。
支度をすませ、すぐに出立致します故、
これにて失礼致します!」
そう言って深々と頭を下げて、すぐに薬草の館へと急いだ。

「山吹は居るか? 居ないなら勝手に入るぞ。
さてと……えーっと……妙薬、妙薬と……
おー……あった!あった!
これとこれと……そうそう……これもだ!
これだけ揃えば、恐らく何とかなるだろう」

整然と並べられた薬棚から楓は数本薬瓶を取り出し、
さらに厳重に封をして、次々に麻袋に入れていった。
そこへ魔女で薬師の山吹が、
ゆっくりと部屋の中に入ってきた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/03 16:50 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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