届かない季節(翼の章)(21)
ザザザ……ザザザ……
波が打ち寄せる砂浜に三人は佇んでいた。
「姫様、寒くはありませぬか?」
そう言って藍花はそっと羽衣を差し出した。
「ええ、大丈夫。
それよりも……皆移動できましたの?」

「はい!
人数が思いの外少なかったので……
しかも……ほとんどの方が、
美酒に酔いしれておりましたので、
皆全ては夢の中の出来事だと、
思っていることでございましょう」
しっかりとした口調で紫苑が答えた。

ここは茜姫が地球以外に、
飛行民族が唯一生きていける場所として、
木の下の集会場で話した「海球星」である。

まるでかつての地球と瓜二つの様相を呈していた。
一つ違うのは海以外の陸には……
原始植物だけが生い茂り、
小高い丘があるだけで、
他の生き物の気配を全く感じないことであった。

「あっ!」
突然藍花が驚いた表情で声を上げた。
しかし姫様の前だという事に気づき、
もう一回、丁寧に言い直した。

「恐れながら申し上げます。
只今私の手のひらに……
謎の白銀の光が現れております。
方角的に申しますと……
先ほどまで居りました場所にございます」

「白銀ですって!
ついに、あの方が覚醒されたのですね」
思わず茜姫は叫んでしまった。
「ついに……ついに……
夢にまで見た……あの方が……」
そう言ったきり、茜姫はただ波間を見つめていた。

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【2008/05/02 14:07 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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