届かない季節(翼の章)(20)
「では只今から……
楓様のお召し代えをさせて頂きます!」
鳥のさえずりの様に澄み切った声。
それを聞いていると、ここが地底ではなく、
キレイな水を湛えた湖畔に居る様な錯覚に陥った。

「ひょっとして……
この子は……ここの者ではないな」
かつて幼い頃に聞いた声の記憶が蘇ってきて、
楓は懐かしい気分になっていた。

「ん。この服、気に入ったぞ!」
そう言って鏡の前で一回転してみせた。
透き通る様な肌に、端正な顔立ち。
きっと楓は母親似なのだろうと、
誰もがそう思っていた。

「おうー……楓……
王族の装束が実に似合っておるぞ。
さあこちらに来るがよい!」
そう言って玉座にどっしりと腰を下ろした。

「はい! 父上」
食卓には何処で取れたのだろうという程、
色とりどりの食材を使った料理で、
食卓は埋め尽くされ、
さらに次から次へと料理が運ばれてきた。

それを見た楓は、
「父上、さすがの私もこんなには食べ切れません。
今日は再会のメデタイ宴。
この者達と一緒に良き日を祝いたいのです。
私の願いをお聞き頂けますか?」

そんな提案に侍従は真っ青になり、
そこに居る者達の身体は既に硬直していた。

そんな暫しの静寂の後、
「ははは……楓には……参った! 参った!
今日は無礼講じゃ! 
皆のもの、思い切り食べて飲むがよいわ」

今までに聞いたことも無い言葉に、
皆戸惑っていたが、
楓は地底の王に何種類という酒を、
虹色のギヤマンの杯にニコニコしながら注ぎ続けていた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/02 14:05 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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