届かない季節(翼の章)(19)
あたりをグルリと見渡して、
楓は、うん! と一人頷いていた。
「ちょっと散歩してきていい?」
そう侍従に言うと……
「ちょっとお待ちくださいませ。
王様にお聞きして参りませぬと。それでは失礼致します」
そう言って侍従は奥の間へと消えていった。

「何か一つする度に、
ここでは王のお伺いを立てなきゃいけないのか?
厄介なところに来たものだ!」
さっきまでの人懐っこい表情とは打って変わって、
大人びた鋭い目つきになって呟いた。

「お待たせ致しました。こちらの者をお側にと、
王様からのご伝言でございます。
今日からこの子が身の回りのお世話をさせて頂きます。
さっ……楓様に挨拶をせぬか!」

侍従の傍に居たのは、まだ年端もいかぬ、
楓よりも幼い少女だった。
「なんと……むごい……
まだほんの子供ではないか」
心の中で楓はそう思ったが、無邪気に笑いながらこう言った。
「そうか。父上の言うことは守らねば!」

「ああ……あの……今日から……
楓様のお世話をさせて頂く……
葵(アオイ)と申します」
消え入る様な声でやっと挨拶をした。

「そんなに緊張することは無いよ。
私は父上と違って怒りはしないよ。
その点は安心するが良いさ! ア・オ・イ!」
そう笑顔で話しかけると、
葵はハニカミながら笑顔を返した。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/01 17:34 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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