届かない季節(翼の章)(18)
「おお〜。楓(カエデ)ではないか!
急に現れるとは驚かせおって……」
そう言って王は近づいて頬にキスをした。

「それは失礼致しましたな。
いや、たまには……
父上のご機嫌を伺わねばと……
この様に馳せ参じたのでございますよ」
そう言って深々と一礼をした。

「かか……楓さま、お荷物を……
お預かり致しましょう。
王様、これはどの様に致しましょう?」
ビクビクしながら上目使いで、
王の方に向き直し侍従が尋ねてきた。

「ん。それはあとで良いわ。
今日はこの様に楓とのメデタイ再会の日じゃ。
ぼぅ〜と何をしておる。
早よう祝宴の支度をせぬか! 急げ!」
その語調の強い言葉とは裏腹に、
王の顔は喜びに満ち溢れていた。

「王に子供が居た!」
皆の心の中に衝撃が走り、
それはどんどん伝染していった。

そしてこの世継ぎの出現に、
今までの道のりをさらに強固にする、
これからが始まるのかと思うと、
言い知れぬ戦慄に苛まれるのであった。

王が奥の間に戻った後、
急かされる様に持ち場に戻り、
皆黙々と祝宴の準備に精を出していた。
ただ一人を除いて……。

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【2008/05/01 17:33 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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