「桃の木の下で」森の掟(8)
その老女は倒れているソル婆の横に座ると、
持っていた杖を翳し、身体の上に交差させた。
すると……
それまでピクリとも動かなかったソル婆が、
薄紅色の頬をして、むっくり起き上がったのだ。

「おや、わたしゃ、どうしてここに?……」
自分の現状を把握するまでには、
まだ脳内の機能は回復してはいなかった。

「ソル婆、私がわかるかい?
ジュピターじゃよ。魔女の館の……」

「おおー、ジュピター、息災だったかい?
それにしても、何故、ここに私が?
うーむ。どうしても思い出せない……
ラビト、何か知っているんじゃないかい?」

何も覚えていない様子のソル婆は、
ただキョロキョロ辺りを見回すだけで、
何処か心もとない表情をしていた。

「いえいえ、何もありませんよ。
少しばかり気分が悪くなっておいでで、
そこにたまたま通りがかりましたので、
私の馬車でこの館にお連れしたというわけでございますよ」

「そうかねー。それは安堵した。また何かやらかしたかと……
ほれ周知の様に、そそっかしい気質だろ?
ははは……本当に迷惑かけたねー。
もうラビトには大口はたたけなくなった!
ああー恥ずかしい……ははは……」

ソル婆が赤面しながら笑う中、
ラビトもジュピターも、お互いに目配せをすると、
笑いながらそっと頷いていた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/06/25 12:26 】 | 桃の木の下で(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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