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「うむ。この者の申す事を信じて良いものかどうか……」
気を失って倒れている河童を取り囲んで、 蛍はしばし腕を組んで考え込んでいた。 そこへ茜姫がゆっくりと河童に近づいてきた。 茜姫の羽からは虹色の光が放たれ、 あたりの輪郭を透明なものにしていった。 そして、茜姫がスーッと手を翳した瞬間、 蛍を始め、そこに居た皆の動きは完全に止まっていた。 かつて飛行民族の集まる家で、司と二人だけで話しをした、 あの時と同じ様に、茜姫は周りの時を止めていたのである。 さらに茜姫の指先からは幾筋もの虹色の光が出現し、 その光の糸が複雑に絡み合うと、 一枚の見事な虹色の絨毯を織り上げていた。 すると…… その絨毯は河童の身体の下に滑り込むと、 ゆっくりと空中に浮遊し始め、 森の中に入っていく茜姫の後に続いた。 水の音のする方に茜姫が進んでいくと、 鬱蒼と茂る芭蕉の木々の間から、 少し小高い丘が見えてきた。 茜姫は辺りを見回すと、さらに奥へと進んだ。 「ふふふ……よほど疲れてらしたのね……」 河童は手足をだらりとさせて、 絨毯の上で鼾をかき、ぐっすりと寝ていた。 目の前には十分な水量を蓄えた滝が、 清らかな泉へとその流れを繋げていた。 「なんてステキなところなのかしら。地上の楽園ね!」 思わず感嘆の声を上げる茜姫であった。 遠くの方から美しい鳥のさえずりが聞こえていた。 (漂流の章…完) テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学 |
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