届かない季節(翼の章)(8)
ピチョン。ピチョン。
洞窟の天井部から幾つもの雫がしたたり落ちている。
「今日は何だか寒いわねぇ。そう思わない紫苑(シオン)?」
のんびりとした藍花(アイカ)の声が反響していた。
「しっ……声が大きい!」
その声は藍花とは対照的にとても張り詰めていた。

「捕まって日が経つんだ。
きっと季節とやらも巡っているハズさ。
ここは我々が住んでいた所とはだいぶ違う。
季節というものが存在するらしい。
僕が調べた限りでは、ここは太陽系の惑星みたいだね。
といっても、ここまでなかなか光は届かないけれど……」

「そうなの? そろそろ月に帰りたくなってきたわ。
もう〜姫様ったら何処にいらっしゃるのかしら?
このあたりだってことは、ここに映っていたんだけれど……」
そう言って藍花は手のひらを紫苑に見せた。

手のひらには幾つもの線が縦横に描かれていて、
その中にうっすらと茜色の光が点滅していた。
「あらっ? 昨日、見た時は確かにここだったのに……
今は随分離れた場所に姫様いらっしゃるのね。
これって一体どういうことかしら?
黄金色にはなっていないからご無事だとは思うけれど……」

藍花が続けて話し始めようとした時、
「しっ! 藍花。おしゃべりは後だ。
さっ早く寝たふりをするんだ。この布を被れ!」
そう言って布を手渡すと、紫苑も同じ様に急いで横になった。
カツーン、カツーンという音が、
段々はっきりと聞こえてきて、
こちらに誰かがやってくるのがわかった。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/04/28 01:33 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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