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親の顔を知らずに育った楓。
かつて耳にした風の噂を、 地底の王は楓の涙を見ながら、 思い出していた。 きっと自分では気が付かぬうちに、 父親とほぼ同じ年齢の地底の王に、 父親像を重ねていたのかもしれない。 今までの孤独を思うと、 地底の王は楓をとても愛しく感じるのだった。 地底の王は独身であった。 若い頃に片道通行の恋に破れ、 月から遠く離れたこの地に渡り、 自分の帝国を作ったのだ。 その面差しは母親に瓜二つであった。 楓の顔を見た時思わず息を呑んだ。 そして…… 運命とは皮肉なものだとも思った。 「楓様に水を持ってまいれ!」 浪々とした深い声で地底の王が言うと、 楓は急いで身だしなみを整え、 何事もなかったかの様に振舞った。 「それで……楓様、火急の用事とは? さて……何でございましょう? この私に教えて頂けますかな?」 微笑みながら、地底の王は話しかけてきた。 「私の両親についてお聞きしたい。 不思議な能力を得られるという、 水晶の守り札を私の両親が持っているらしいのだ。 それをあの男は狙っていたと…… これは真なのか否か。 ご存知ならお聞かせ願いたい!」 楓の眼は真剣そのものであった。 テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学 |
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