届かない季節(漂流の章)(27)
「早急というと……
楓様、何でございましょう?」
そう言う屈強な地底の王を見上げると、
滅多に感情を人前には表さない楓が、
不覚にも泣いてしまったのである。

「楓様……楓様……
何か失礼を申し上げましたかな……
それなれば……謝らねばなりますまい」
おろおろしながら地底の王は、楓の傍に駆け寄った。

すると今度は楓は地底の王の胸に飛び込み、
泣きじゃくってしまったのである。
しかし王は何も言わず、
優しく楓の身体を包み込んでいた。

ひとしきり泣いたところで、
楓は我に返り少し頬を赤らめた。
「とんだ無礼を働いてしまった様だ。
大変失礼なことを……」
そう言って腰に装着していた剣を、
王の前に差し出した。

「ははは……何がこれから始まりますかな? 
楓様酔狂が過ぎますぞ……
何も無礼な事など……ほら……ご覧あれ。
ここには我ら以外誰もおりませんぞ。
安心なさるがよい!」
そう言って笑っていた。

その言葉に楓の顔は益々赤くなって、
ただ俯いたまま……口を一文字にして、
その場に居るのがやっとだった。

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【2008/05/27 00:19 】 | 届かない季節No.2(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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