届かない季節(漂流の章)(25)
「あっ! 
月族の方が誰かに連れて行かれたわ!」
話し合いも終わった頃、
突然藍花が大きな声で叫んだ。

その時藍花の手の平は、
暗緑色の光が点滅していた。
それは月族の人間が居る証であり、
しかも何らかの危機に遭っている、
ということを表してもいた。

暗緑色というだけで、
他の二人もそれが誰を指すのか、
もう理解出来ていた。
それは楠の側近を表す色だったからだ。

そこに居る三人は、
楠に会ったことすら無いのだが、
月族の間では楠と朱華の恋物語は、
『月の弓』という小説として語られ、
年頃の少年少女の間では、
一度は読んだことのあるものだった。

「どうやら場所はここの様だわ。
どうして楠様の、側近の方がこちらに?」
しばしの間が空き……
「楠様はこの惑星にいらっしゃる!」
紫苑と藍花は同時に叫んだ。

茜姫の前だった事に気が付き言い直した。
「失礼致しました。
姫様、楠様ご一行はこちらの惑星に、
住んでいらっしゃる様にございます」
そう言うと茜姫の言葉を待った。

「そう……お話には聞いておりましたわ。
楓兄さまのご両親……
わたくしにとっては伯父上と伯母上。
そう、この地に……
さぞや会いたいでしょうね。兄さまは!」
そう言って茜姫は月を見上げた。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/05/26 14:03 】 | 届かない季節No.2(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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