届かない季節(漂流の章)(24)
「ごちゃごちゃと……煩いぞ!」
そう大きな声で近づいてきたのは、
火の民の長、玄武(ゲンブ)であった。

「これは……玄武様。
不審者のようでして……で、思わず……
おいら……殴っちまったんでさあー。
すすす……すみません!」
そう言うと、すごすごと、
後ろの隊列に加わり戻っていった。

「ここに居る連中は血の気が多くて困るわ。
まぁ、ここに居るのはそんな奴等ばかりか
……ふははは……」
この言葉を聞いてその場にいた者は、
身体を震わせていた。

この様に静かに笑っている時ほど、
玄武の機嫌はすこぶる悪く、
その後が大荒れになってしまうのは、
周知の事実だったからである。

「どれどれ……こやつかー。
ここに追放印がついておるわ。
何処かのならず者なのか……
こいつは使えるかもしれんぞ。
おい、牢屋にでも入れておけ!」

「へい、わかりやした!」
そう言うと屈強な男たちが二人がかりで、
芭蕉で編んだ縄でぐるぐると全身を縛り上げ始めた。

そして蛍をひょいと担ぎ上げると、
言われた通りに、牢屋とは名ばかりの、
不揃いの木の柵に囲まれた場所へと消えていった。

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【2008/05/25 21:56 】 | 届かない季節No.2(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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