届かない季節(翼の章)(6)
ゆらゆら揺れる蝋燭の灯りに照らされて、
茜姫の羽からは幾重にも光が放たれ、
あたりの輪郭を透明なものにしていった。
それと同時にそこに居る者達の時も止めていた。

「お前がやったのか?」
司の口は何故かそう動いていた。
「ええ、アナタとお話がしたかったんですもの」
そう言ってちょっと茜姫は頬を赤らめた。

「アナタには命を助けて頂いたのです。
ちゃんとお礼も言わぬままでは失礼ですわ」
水晶の様に透き通った声で続けてこう言った。

「先ほどは危ないところを助けて頂き、
本当にありがとうございました。
申し遅れましたが、私の名前は茜姫。
月族の王女なのです」

言い終わった後の王女らしい優美な振る舞い。
司はすっかりあっけにとられていた。
「月族? しかも王女だって?
じゃあどうやってあの月からやってきたんだ?
まさか……俺たちと同じ方法で空間移動出来るというのか?」

ジジジジ……と蝋が溶ける音がして、
光の帯は少しずつ解けていき、
やがて全てすっと何処かに吸い込まれていった。
それと同時にさっきのザワザワとした賑わいも戻り、
婆やが食事を運んでくるのが見えた。

「司様、食事の用意が整いましてございます。
ささ……そちらのお嬢様もこちらにいらっしゃいませ。
本当におキレイでございますな」
そう言って婆やは司に軽く目配せをした。

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

【2008/04/27 17:19 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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