届かない季節(翼の章)(5)
椋は目を閉じて、風のそよぎに耳をそばだてていた。
「無事飛んだ様だな。良かった。」
まだ日向の匂いが残っている草原にドサッと腰を下ろし、
最近頻繁に行われている翼狩りに
言い知れぬ不安を感じ始めていた。

「そろそろここも危ないな。
もっと安全な処へ移動しなければ……
そして……こいつも……」
そう呟いて、萎びた皮袋の中身を取り出した。

それは亡き父から受け継いだ、
見事な装飾が施された首飾りだった。
「お前が生まれて20年経った満月の晩に
これをかざして見るがいい。
決して人間どもの手に渡してはならぬぞ!」
この言葉だけを残して父は息を引き取った。

椋の父は風の民の長(おさ)であった。
勇敢で民からの信頼も厚く、
多忙ゆえにあまり家族を顧みる事はなかったが、
それでも自慢の父親であった。

「20年って言えばあと3年か。
何が起きるというのだろう?」
好奇心と未知への畏怖、そして未来への希望。
混沌とした今に風穴を早く開けたかった。

「おぉ〜い、椋!
さっきはアリガトな。お陰でまだ生きてるぜ!
あっ、この子?説明はあとあと。
腹減ってもう動けねえや。
婆や、急いで何か暖かい食べ物を持ってきてくれ!」

あまりに饒舌な司の様子に皆少し戸惑っていたが、
「かしこまりました。司様、すぐにお持ち致しますね」
そう言って婆やは奥に消えてしまった。

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【2008/04/27 17:16 】 | 届かない季節No.1(小説) | コメント(0) | トラックバック(0) |
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